1985年8月12日午後6時56分に東京発大阪行の日航ジャンボ機が群馬県多野郡上野村の高天原山(御巣鷹山は報道の誤り)に墜落した航空機事故、いわゆる「日航ジャンボ機墜落事故」が本作の舞台です。犠牲者520名は日本国内で発生した航空機事故では最多であり、単独機の航空事故では世界最多である、そうです(Wiki調べ)。
余談ですが、日航機墜落事故は山崎豊子の『沈まぬ太陽』で強い印象を持っていました。懲罰人事や労使闘争などを経た日航社員視点を通して事件の詳細が描かれています。本作は横山秀夫の同名小説が原作ですが、未読です。
堤真一演じる地方新聞社の記者視点を通して、社会派ドラマと思いきや原田眞人独特の濃厚エンターテイメント作品に仕上がっています。(同監督作の『金融腐食列島 呪縛』はお薦めです。)これだけの惨劇に対してエンターテイメントとは甚だ不謹慎ですが、誤解のないように言えば、事故そのものや事故現場の凄惨さに対しては非常に真摯に描かれています。しかし、こと北関東新聞社社内は事故のリアリティとは対照的にありえないほどに怒号が飛び交う職場です。漂う緊張感とダムの決壊のように揉め合う人々、リズミカルなカットが場面を盛り上げます。「販売部と戦争だ」なんてセリフ、職場で言ってみたくなること請け合いです。堺雅人や遠藤憲一など、クドイ演技がはまっています。
強い信念や思いを人が貫こうとするとき、貫くという行為を形作るために人は障壁を設定します。障壁がなければ「貫く」という行為自体が見えてこないからです。次第に人はその障壁を乗り越えることが目的となり貫く信念がぼやけてきます。それを本作では「クライマーズ・ハイ」と言っている様な気がしました。
人が何かに一生懸命な姿は、ときに涙ぐましく、ときに滑稽です。その分岐点が見る人によって微妙に異なるあたりが非常に興味深いです。